名前の由来は「too long; didn't read」— 長すぎて読まなかった、というネットの定型句だ。一時間の会議録画を最初から見る人はいない、という前提から作られた道具で、その割り切りが機能の設計に一貫している。全部を残しつつ、必要な部分だけ取り出せるようにする。それがこのサービスの立ち位置だ。
無料枠の設計が独特で、ここが最大の特徴になっている。**録画の本数に制限がなく、保存容量も無制限、文字起こしも無制限**。30以上の言語に対応していて、これらが無料の範囲に入っている。多くの競合が「月何分まで」で区切るなか、録ること自体は無制限にして、AI の処理のほうに制限を置いた設計だ。
その制限は月10件。要約や AI への質問が月10回までで、それを超えると使えなくなる。ただし記録自体は残り続けるので、あとから読み返すことはできる。「とりあえず全部録っておいて、大事なものだけ AI に処理させる」という使い方に合わせた設計といえる。
機能で面白いのは切り抜きだ。会議中に気になった箇所に印を付けておくと、あとでその部分だけを短いクリップとして取り出せる。複数のクリップをつないで一本にまとめることもできる。会議に出られなかった人に「この5分だけ見て」と渡せるので、一時間の録画を共有するより遥かに親切だ。追跡したい話題を登録しておけば、その話が出た箇所を自動で拾ってくれる機能もある。
日本語については、サイト全体が日本語化されている。30以上の対応言語に日本語も含まれる。ただし公式が掲げる精度の数字がどの言語のものかは明示されておらず、日本語での実力は自分で確かめるしかない。無料で試せる範囲が広いので、確かめること自体は簡単だ。
惜しいと感じるのは、**対応する会議アプリが Zoom・Google Meet・Microsoft Teams の三つに限られる**点だ。この三つを使っているなら問題ないが、他の仕組みで会議をしている職場では使えない。データの保存期間も無料プランでは最大三か月なので、長期の記録として残したいなら有料が要る。
料金は月二十九ユーロの Pro から。年払いにすると月十八ユーロ相当まで下がる。Notta より高いが、切り抜きと共有の機能に価値を感じるなら妥当な差だ。
Notta との使い分けはこうなる。日本語の精度と要約を重視し、一人で記録を残すなら Notta。録画を大量に残して、チームで必要な部分を共有するなら tl;dv。前者は「記録する」道具、後者は「共有する」道具だと考えると選びやすい。
無料の範囲が広いので、まずは実際の会議で何本か録ってみるのがいい。使い続けるうちに、月10件の AI 処理が足りるかどうかが自然と分かる。足りなくなったときが、課金を考えるタイミングだ。
共有のされ方まで含めて考えると、この道具の価値はチームの人数に比例する。一人で使うなら記録が残るだけだが、五人のチームなら「出られなかった会議の要点を5分で追える」体験が人数分生まれる。会議の欠席が気最初にくなくなる、という副次的な効果もある。
運用の注意として、録画を無制限に残せるということは、残したくない会話まで残ってしまう可能性があるということでもある。参加者への録画の告知と、機密を含む会議での扱いは、導入前にチームで決めておきたい。
料金の判断は「共有する相手が何人いるか」で決めるといい。一人で使うだけなら無料枠と Notta で足りる。人に渡す場面が週に何度もあるなら、切り抜き機能に月額を払う価値が出てくる。
名前が示すとおり、この道具が解こうとしているのは記録の不足ではなく、記録が多すぎて読まれない問題のほうだ。その視点で見ると、無制限の録画と制限付きの要約という一見ちぐはぐな設計が、実は筋の通った割り切りだと分かる。