会議のあとに残る仕事のうち、いちばん誰もやりたがらないのが議事録だ。話は覚えているのに文字にするのが面倒で、後回しにするうちに記憶が薄れていく。Notta はそこへ入っていく道具で、無料の枠のまま二日ぶん触ってみた。
入口
五つの入口
入れ方は五つある。その場で録音する、音声や動画のファイルを上げる、Web会議に立ち会わせる、動画の URL を渡す、画面ごと収録する。カレンダーを繋いでおけば、予定の時間に自分で会議へ入っていく。
今回はまず、手元に台本のある自作の動画を URL で渡した。答え合わせのできる素材を選んだつもりだった。
取り込むと、すぐタイムスタンプの付いた本文が並ぶ。ブロックをダブルクリックすれば、その場で直せる。
最初の出力
台本と一字一句だった
出てきた文章を元の台本と突き合わせて、少し驚いた。読めた範囲が表記まで同じだったからだ。「ろう」と読ませた箇所が蝋の漢字になり、ダッシュの位置も読点の打ち方も一致している。
ただ、一致が完全すぎた。動画には字幕が乗っている。それを読んだだけなら、日本語の実力を測ったことにはならない。そこで、字幕を持たない一分ほどの講演の音声を、ファイルとして入れ直した。
結果は静かに決定的だった。「えー」「あの」「まあ」といった言い淀みが、整えられずそのまま文字になっている。そして、贈賄と収賄が正しく書き分けられていた。同じ音で、前後の話の流れでしか判別できない二語だ。
ここが Notta の芯だと思う。話し言葉を書き言葉に直さない。言い直しも口ごもりも、そのまま置いていく。読みやすい文章が欲しい道具ではなく、その場で誰が何をどう言ったかを残す道具だ。会議の記録に要るのは、たいてい後者のほうになる。
追い込む
Notta に読ませ、まとめさせ、聞く
本文の隣に AI要約のタブがある。開くと、四つの見出しに整理された要約が出た。九分半の動画を入れたときも、後半に出てくる年号や逸話まで拾って並んでいる。末尾には会議向けのアクション項目の欄があり、動画では特定されませんでしたと正直に返ってくる。
要約の中身も台本と突き合わせた。年号も金額も落ちていない。ずれたのは人名がひとつ、ビーチーがビーチャーになっていた一件だけだった。数字は守る、人名は一文字動くことがある。読み返すとき、どこに目を置けばいいかが分かる。
隣のマインドマップは、同じ要約の文をそのまま木に置き直したものだ。要点を短くしてくれるわけではないので、読む量は変わらない。話の骨組みを一目で見たいときのものだと思っておくといい。
右のパネルには Notta Brain がいて、記録の中身について質問できる。答えるときは、根拠にした記録を一件のソースとして示してくる。そこから議事録メールの下書きや、過去の会議の横断検索へ繋がる導線が並ぶ。文字起こしの、その先まで手を伸ばそうとしているのが分かる。
話者には自動で番号が振られ、名前を付けられる。今回は一人で話した音声だけだったので、複数人での分かれ方はまだ確かめていない。
限界
無料でどこまで見えるか
無料の枠には、はっきりした形がある。一回の記録で読めるのは冒頭三分ぶんだ。九分半の動画を入れると、三分二十秒あたりで文章がぼかしに変わり、その先は案内に置き換わる。
面白いのは、音声そのものは全部処理されているところだ。要約には後半の話が入っている。読めないだけで、聞かれてはいる。そして枠は、読めた分ではなく入れた分で減る。ホーム画面には使用済み十六分と出ていて、入れた四本の長さの合計とぴったり同じだった。短い素材を選んで入れるのが、この枠での正しい遊び方になる。
書き出しのボタンを押すと、プレミアムの一覧が開く。DOCX も SRT も PDF も、無料では一つも出せない。無料で作った記録は Notta の中に閉じたままになる。画面で読んで要点を拾う使い方なら、それで足りる。持ち出して配る段になったら、そこが有料の出番だ。混み合う時間帯は処理が遅くなることも、画面の上で先に断ってある。
向いているのは、日本語の会議を残す必要があって、整った文章より発言そのものを残したい人だ。試すなら、いちばん記録が面倒な定例をひとつ選んで、冒頭の三分だけ入れてみるといい。参加者の名前や社内の言い回しがどこまで拾われるか、判断はその三分で付く。自分の言い淀みが文字になって並ぶのを見るのは、少し気恥ずかしくて、思ったより面白い。



