Otter.ai は、この分野でいちばん古株にあたる。前身の会社が生まれたのは2016年で、生成 AI の流行より遥かに前だ。2018年には Mashable と Fast Company の年間ベストアプリに選ばれ、英語圏では文字起こしといえばまずこの名前が挙がる存在になった。日本との縁もあり、2020年には NTT ドコモ系のファンドが主導する資金調達を受けている。
強みは会議への溶け込み方だ。カレンダーと連携させておくと、予定の時刻に自動で会議に入り、録音を始め、話者を識別しながら文字に起こす。終われば要約とキーワードが付く。参加者は何もしなくていい。この「意識しなくても記録が残る」状態を作れるのが、長く使われてきた理由だろう。検索も強く、言葉からも日時からも話者からも記録を辿れる。
ただし日本語で使うことを考えるなら、正直に伝えるべき点がある。**公式サイトの中で説明が食い違っている**。英語の料金ページには文字起こし対応言語として日本語が明記されているのに、日本語向けのページでは「さまざまな国の方が話す英語に対応」と書かれ、日本語音声の文字起こしには触れていない。同じ会社のサイトで位置づけが揃っていないというのは、日本語利用者にとって不安材料だ。
この食い違いをどう読むかは判断が要る。技術的には日本語を扱えるが、日本市場に向けては英語会議の道具として売っている、というのが実態に近いのだろう。日本語の会議が中心なら Notta のほうが安心できるし、英語の会議が中心ならこちらの実績が効いてくる。
無料枠の制限も厳しめだ。月300分は悪くないが、**一回の会話が30分まで**で、しかも音声ファイルの取り込みは**生涯で3回まで**という珍しい制限が付く。録音済みのファイルをまとめて処理したい用途には向かない。あくまで「これから行う会議」を対象にした道具だ。
料金は月十六・99ドルの Pro から。年払いにすれば月八・33ドル相当まで下がる。一回の会議は90分まで、月1,200分まで文字起こしできる。年払いにしたときの価格は競合と比べても妥当な水準にある。
三つを並べると選びやすい。日本語の会議が中心なら Notta。録画を残してチームで共有したいなら tl;dv。英語の会議が中心で、実績のある定番を選びたいなら Otter。どれも無料で試せるので、いちばん多い会議の形式で一度ずつ回してみるのが確実だ。
道具の性能より、自分の会議がどの言語で行われているかが選択を決める。そこを最初に見極めれば、迷う時間は短くて済む。
実績の長さは機能表に出ない強みでもある。会議の録音という用途では、突然のサービス終了や仕様の激変が致命傷になる。2016年から続いている事実は、これから記録を積み上げる相手として一定の安心材料になる。
使い方の注意を一つ。自動参加は便利だが、参加させる会議を選ばないと、記録したくない打ち合わせまで文字になってしまう。カレンダー連携を入れるときは、対象にする会議の条件を最初に決めておくのが安全だ。
そして日本語での利用を考えているなら、契約前に必ず自分の声で試してほしい。公式の説明が揃っていない以上、実際に試した結果だけが判断材料になる。無料枠でも30分は録れるので、確かめる手段はある。
検索の使い勝手は、記録が溜まるほど効いてくる。半年前の会議で誰が何と言ったかを、言葉一つから引き当てられる。議事録を読み返す習慣がない人でも、この検索だけは使うことになる。
総じて、英語圏の会議を日常的に持つ人には有力な選択肢だ。日本語主体の職場なら、最初に他を検討してからでいい。