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第 1 号 ·

人には言えないことを、AIには話せる。何が違うんだろう。

たとえば、私が友人の一言に傷ついたとします。本人に伝えるほどのことなのか、自分が気にしすぎなのか、まだ分からない。別の友人に聞いてもらおうにも、事情を説明するうちに悪口になりそうでためらう。

そんな場面でAIの入力欄を開くとしたら、私は何を求めているのか。いい答えが欲しいのか。それとも、こんなことを話していいのかと迷わずに、まず言葉にしたいのか。

相談には、話す前から負担がある

マイナビが2026年10月に公表した分析では、20〜50代の正社員のうち、生成AIの利用経験者の36.6%が、人生の悩みをAIに相談したことがありました。元の調査は同年4月に行われています。

相談した理由には、親には話しにくいこと、身近に相談相手がいないこと、時間を選ばず話せて途中で切り上げても差し障りがないことが挙がっています。

私が注目したのは、途中で話を終えてもいい、という点です。悩みが解決したから会話を終えるとは限らない。話すうちに疲れたり、今日はもう考えたくなくなったりすることもある。人に時間を取ってもらっていたら、「聞いてもらったのに悪いな」という気遣いまで加わります。

私はこの回答を、話す時間や終わり方を自分で決められることも、AIを相談相手に選ぶ理由になる、と読みました。相談のしやすさを考えるとき、答えの良さとともに、相談を持ちかける側の負担にも目を向けたいと思います。

では、時間に余裕があって、いつでも話を聞いてくれる人なら、同じように話せるのでしょうか。

話したあと、どう見られるか

Lucasらが2014年に発表した研究では、参加者は画面上の仮想人物から面接を受けました。その相手を自動応答だと説明された条件では、人が操作していると説明された条件よりも、自分のことを話す際の不安が低くなりました。現在の生成AIを試した研究ではありませんが、相手をどう認識するかが、開示への不安に関わることを示しています。

冒頭の友人の話に戻ると、私が伝えるのは、相手に言われた言葉だけではありません。「その言葉で傷つく自分」も相手に見せることになります。こんなことで気にする人だと思われないか。嫉妬しているだけだと受け取られないか。話す内容と、話したあとの自分の見え方が重なる。

私はここに、AIには話せるという感覚を考える手がかりを感じます。相手の都合を気にしなくてよいことに加え、自分への見方が変わることを心配せずに済む。それなら、まだ自分でも認めたくない気持ちを、言葉にする余地が生まれる。

人に見られていない気がしても、会話が人に読まれることはあります。Googleは、Geminiの[アクティビティの保存]をオフにしても、応答や安全確保のためにチャットを使い、人によるレビューも含むと説明しています。

自分の味方をしてくれる返事

話せる条件がそろったあと、返ってくる言葉もまた、その相手に話し続けたい理由になります。

2026年に公表されたChengらの研究では、参加者は同調的なAIをより信頼し、また使いたいと答えました。同時に、自分が正しいという確信が強まり、相手への謝罪や関係修復への意向は弱まりました。これは実験で測られた判断と意向の変化であり、その後の人間関係が実際に壊れたことまで追跡した結果ではありません。

この結果から私が考えるのは、相談相手を信頼する理由の中に、自分の言い分を認めてもらえることも入り込む、ということです。自分では公平な意見を求めているつもりでも、味方になってくれる返事を受け取ると、その相手をもう一度選びたくなる。研究で同調的なAIが好まれたことは、AIに話したくなる理由を考えるうえでも外せません。

友人の言葉に傷ついた場面なら、「傷ついたと感じていい」と言われることで、ようやく自分の気持ちを認められることはあると思います。ただ、「私は傷ついた」と「友人が間違っている」は、確かめる対象が違います。前者が分かっても、友人の意図や事情まで分かったことにはならない。

私が気になるのは、返事に納得したとき、この二つを一緒に受け取ってしまわないかということです。気持ちを理解してもらえた安心が、自分の見方も正しかったという確信へ移る。そのとき、返事のどこに納得したのかは、見えにくくなります。

話せたあとに残る問い

AIに話しやすい理由をたどると、時間や気遣いの負担、他人から評価される不安、そして自分の言い分を認めてくれる返事に行き着きました。

もし私がAIとの会話で「傷ついていたんだ」と気づけたなら、その気づきは大切にしたい。まだ言葉になっていなかった気持ちが、自分に分かる形になったのだから。

その気持ちを、今度は誰に話すんだろう。AIから返ってきた言葉のどこまでが、自分にはなかった見方で、どこからが自分の言い分を整えたものだったんだろう。

今度、友人に話すとき、私は相手の言葉も聞きたいと思っているだろうか。

出典

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